第2章 税務上の手続き 第3節 消費税の申告を活用する

1、消費税の概要

(1)消費税の概要

 ①動物病院の収入(売上)項目はサービス業であり、全て課税対象止まります。

 ②動物病院の費用(支出)項目はⅰ消費税の課税対象とⅱそれ以外のものに区分されます。

  ⅰの内訳…設備投資(病院建物・医療器械等)・薬品・テナント家賃・その他経費全般

ⅱの内訳…役員報酬・給与・専従者給与・賞与(人件費)・社会保険等・保険料・税金・会費の一部・利息・手数料の一部・減価償却費等が該当する。


(2)消費税の計算

 ①原則

  ……患者さんから売上から課税対象の支出額を控除したものが消費税の納付額となる

  (1)①  ―  (1)②ⅰ  = 消費税額(税務署への納付金額)

 ②特例…簡易課税申告方式※1

  売上に「みなし仕入れ」※2の率※3を掛けて簡単に消費税の計算をする方法をいう。

※1、2年前(基準期間)の収入が年間5,000万円以下で、かつ、「簡易課税制度選択届出書」を適用年度の前年以前に提出した場合に適用される。

※2、「みなし仕入れ」とは簡易課税の場合に適用される、本来は支払った課税対象額と計算に反映させるべきであるが、一定率を支払ったものが「みなし仕入れ」という。

※3、診療・ホテル・トリミング等は50%、処方食・その他の物販は80%

 ③免税業者

  ⅰ新規開業の個人事業

  ⅱ新規開業の法人で資本金が1,000万円以下

  ⅲ2年前の売上が年間1,000万円以下の個人事業、又は法人で資本金1,000万円以下

2、新規開業時おいて消費税の課税事業者を選択したケース

開業時には多額の設備投資をすることから、収入から支出を差し引いた消費税を計算した場合には、翌年3月に確定申告により、多額の消費税が還付される。

開業月が年末に近い程、収入項目金額が少なくなり、還付金が多くなる。しかし、年初に開業した場合で、かつ、繁盛して、売上が多い時は還付金か少ない、又は若干の納付があることがあるので注意する。

更に、開業当初に消費税の課税事業者となるためには課税事業者選択届出書を開業年中に所轄税務署長に提出しなければならない。

(1)土地建物を購入する場合
支出項目金額収入項目金額
建物(住民部分を除く)2,200売上1,500
外清工事100
不動産手数料100
医療器械900
小物関係150
開業時の薬品30
開業時の広告費20
その他の諸経費590
合計4.0901,500

消費税額の計算

収入項目-支出項目=還付金額

1,500-4,090 =△129.5


(2)テナントの場合
支出項目金額収入項目金額
内装工事1,200売上1,500
看板50
契約関係150
医療器械900
小物関係150
開業時の薬品30
開業時の広告費20
その他の諸経費590
合計3.4501,500

消費税額の計算

収入項目-支出項目=還付金額

1,500-3,450 =△97.5

3、開業時における消費税の流れ

(1)開業後における消費税の流れ

 ①開業初年度…消費税の免税業者につき、納付・還付のいずれもない。

 ②開業2年目…同上

  しかし、翌年に消費税の課税業者となるが、簡易課税を選択する場合には、当該年中に届出書を提出する。

 ③開業3年目…2年前の売上が1,000万円以上につき、申告・納付がある。

  ⅰ簡易課税のケース(土地建物を購入した場合とテナントの場合と同額)

   25,800,000×5%×50%=645,000

  ⅱ原則課税のケース

   ・土地建物と購入した場合

    (25,800,000-11,086,000)×5%=735,700

   ・テナントの場合

    (25,800,000-14,686,000)×5%=555,700

※一般的には消費税の納付計算は簡易課税方式の方が納税額が低めになることが多いが、テナントの場合には家賃が消費税の納付計算上考慮されることから簡易課税より納付税額が低くなることがある。

    ※1開業当初には従業員は5名以下と思われる。


(2)開業当初から消費税の課税業者を選択した場合
 ①開業初年度…原則課税での計算となる

  ⅰ土地建物を購入した場合

   (15,000,000-40,900,000)×5%=△1,295,000(還付金)

  ⅱテナントの場合

   (15,000,000-34,500,000)×5%=△975,000(還付金)

   ※テナントの場合は投資額が少ないことから、土地建物を購入した場合より、還付金が少ない。

 ②開業2年目

  ⅰ土地建物を購入した場合

   ・原則課税(21,000,000-9,169,000)×5%=591,500

   ・簡易課税21,000,000×5%×50%=525,000

  ⅱテナントの場合

   ・原則課税(21,000,000-12,889,000)×5%=405,500

   ・簡易課税21,000,000×5%×50%=525,000

  ※両者ともに、原則課税の方が納付税額は低い。

 ③開業3年目

  ⅰ土地建物を購入した場合

   ・原則課税(25,800,000-11,086,000)×5%=735,700

   ・簡易課税25,800,000×5%×50%=645,000

  ⅱテナントの場合

   ・原則課税(25,800,000-14,686,000)×5%=555,700

   ・簡易課税25,800,000×5%×50%=645,000

 ④ 業後3年間での消費税の納付金額合計

  納税者有利をした3年間の納付税額

  ⅰ土地建物を購入した場合

   開業初年度     △1,295,000

   開業2年目       525,000

   開業3年目       645,000

   納付税額合計    △125,000

  ⅱテナントの場合

   開業初年度     △975,000s

   開業2年目       405,500

   開業3年目       555,700

   納付税額合計    △13,800

※土地建物を購入した場合とテナントの場合の両者ともに「開業当初から消費税の課税業者を選択した場合」の方が消費税の納付税額は低ものとなりましたが、これは、あくまでもシュミレーションであり、結果が異なることもあるので注意してください。