第2章 税務上の手続き 第2節 青色申告の有利性

 上記、第1節で述べたように開業当初は法人組織より個人事業の方が有利な傾向がある。そこで、個人事業者の申告方法には「青色申告」と「白色申告」の2つの方法があるが、青色申告は届出書(青色申告承認申請書)を提出して適用されるもので届出書の提出がなければ白色申告をなる。

1、青色申告の申請方法

 その年分以後の各年分の所得税について青色申告書を提出する承認を受けようとする人は、その年の3月15日まで(その年1月16日以降新たに病院を開業した場合には、その病院を開業した日から2ヶ月以内)に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。同一生計親族(同居家族に対する給与)に対して給与を支払う場合には「青色申告事業専従者給与に関する届出書」を速やかに上記と同様に提出しなければならない。

2、会計帳簿の記帳義務

 青色申告者は、その事業年度における事業取引を「仕訳帳」「総勘定元帳」、その他必要な帳簿に記帳しなければなりません。例として、日々の現金取引を記帳する「現金出納帳」、銀行預金のお金の動きを示す「普通預金出納帳」「当座預金出納帳」、日々の売上を記帳する「売上帳」「売掛帳」、薬品、その他の消耗品の取引を記帳する「仕入帳」「買掛帳」等の帳簿の記帳義務が発生します。
 白色申告者は、その事業内容については、青色申告者と異なり簡易な帳簿作成でも、事業内容を示せる帳簿の記帳で済みます。しかし、白色申告者であっても事業の合計所得が300万円以上である場合には、青色申告者と同様の記帳義務が生じます。
 なお、これらの帳簿について事業主は、7年間の保存義務が生じます。

3、添付書類

 青色申告書には、次の書類を添付しなければなりません。

  1. 損益計算書(事業期間における総収入と総必要経費の明細、当期の利益を示す書類)
  2. 貸借対照表(事業年度末における総資産と総負債の明細、当期の利益を示す書類) 提出は任意です
  3. その他の一定の書類

 白色申告書には、収支内訳書のみを添付します。

4、青色申告の特典

(1)貸借対照表の添付による控除
 青色申告者は、例外的に簡易な会計帳簿の作成による申告が認められますが、事業内容を厳密に記帳していないと、貸借対照表が作成できません。会計帳簿を厳密に記帳すると、貸借対照表の作成が可能となり、65万円の所得控除が受けられます。
 白色申告者には、特に控除はありません。

(2)青色専従者給与
 青色専従者給与とは、青色申告者と生計が一つである配偶者、その他の親族が、事業に係わる労働をした場合には、その労働分を給与として経費にすることができます。これを青色専従者給与といいます。
 経費となる金額は、労務の対価として相当と認められる金額で、青色専従者給与に関する届出書に記載した金額です。その結果、事業の所得が事業主分と配偶者分に分散できることにより節税効果が生じます。
 白色専従者給与は、次の計算のいずれか低い方の金額になります。
①次に掲げる事業専従者の区分に応じ、それぞれに掲げる金額
 イ.事業主の配偶者である場合  86万円
 ロ.配偶者以外の場合      50万円
②事業の所得金額 ÷(事業専従者の数+1)
 上記の内容から青色申告の場合において、配偶者に給与を毎月20万円と賞与(夏期冬期)を20万円ずつ出したとすれば、青色専従者給与の合計金額の280万円が給与として必要経費となりますが、白色申告の場合には、配偶者の給与は年間合計86万円以下となっており、その金額は大きく異なります。

(3)固定資産の早期の費用化
 一定の基準の達する医療機械を、早期に費用計上することができます。(特別償却といい、白色申告者には認められていません。)

(4)税額控除
 (3)の特別償却を採用しない場合、納付する税金から直接差し引く税額控除の制度もあります。特に設備をリースしている場合は税額控除が有利です。

(5)家事関連費の事業負担分の経費算入(車両関係、水道光熱費等)
 青色申告書は業務の遂行上必要であることが明らかなものであれば、経費として認められますが、白色申告書の場合には、主たる部分が業務遂行上必要、かつ、明らかに区分できる部分とされることが要件であり、その支出部分の50%超事業性があることが必要となるので、家事関連費の経費要件が厳しい内容となります。

(6)純損失(赤字)の繰越控除
 前年以前3年間の各年(その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る)に生じた純損失(赤字)の金額(前年以前に既に繰越控除をした部分の金額を除く)があるときは、その純損失(赤字)の金額をその年分の総所得金額から差し引きます。これは、開業したての場合、当初は売上が少なく、開業に関しての経費が多く出ることから、損失額が生じることがあります。その後、利益が出始めたとしても前年以前3年間の赤字分と相殺することができることから、開業して数年は納税しなくても済む場合があります。先生方におかれましては、青色申告書を開業年度から行うことをお勧めします。
 白色申告書の場合には、いくら赤字が生じても翌年に繰越できません。

(7)純損失(赤字)の繰り戻しによる還付
 青色申告者は、その年に純損失(赤字)が生じた場合には、損失申告書と共に還付請求書を提出すると、一定の算式により求められた前年分の所得金額の還付を受けることができます。

(8)銀行融資の円滑化
 青色申告書の添付書類には、事業所の総資産・総負債の明細が示され、かつ、売上の明細、その他経費の明細等が明瞭に示され、医療機械の設備投資における銀行融資の分析が明確な数字を基に行われることから、一般的には白色申告書よりも青色申告書の方が融資を受けやすいと考えられます。
 白色申告書と青色申告書とでは、青色申告書の方が帳簿の記帳が多少複雑になりますが、上記で述べたように納税者への税務上の特典、および他にも多くの有利な点があることから、できることなら先生方におかれましては、青色申告をお勧めします。